セレクション展「蝉時雨」

Gallery Kazuki summer selection

2025.7.11 (Fri) - 27(Sun)

酷暑の日々、皆さまいかがお過ごしですか。
この茹だるような毎日が人生でいちばん涼しかった夏になるのかも知れません。

そんななか百年の歴史を生きた銀座同潤会アパートメントの一室にて、
冷んやりとした静けさの音に耳をすませてみませんか。

この夏、画廊香月セレクション展《蝉時雨》を開催いたします。
皆さまとお会いできますこと、楽しみにしております。

香月人美

 

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Gallery Kazuki summer selection

「 蝉 時 雨 」

13:00 – 19:00 [ 水・木/休廊 ]

 

俺がおととい死んだので友だちが黒い服を着こんで集まってきた
驚いたことにおいおい泣いているあいつは生前俺が電話にも出なかった男
まっ白なベンツに乗ってやってきた

俺はおとつい死んだのに世界は滅びる気配もない
坊主の袈裟はきらきらと冬の陽に輝いて
隣家の小五は俺のパソコンをいたずらしてる
おや線香ってこんなにいい匂いだったのか

俺はおとつい死んだからもう今日に何の意味もない
おかげで意味じゃないものがよく分るもっとしつこく触っておけばよかったなあ
あのひとのふくらはぎに

谷川俊太郎《ふくらはぎ》

 

 

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高島 進 Susumu TAKASHIMA

私は、画面の中にイメージではなく、画面を構成する素材の持つ無限の可能性を見出そうとしています。
筆や色鉛筆は、紙やキャンバスと出会いながら、太さが変わる線として画面を埋めていきます。

クラシック音楽の題名の多くは、「ピアノとヴァイオリンのための音楽」等、「楽器のための音楽」になっています。
しかし絵画には、例えば油絵はあっても「油絵具のための絵画」はありません。
私の制作する「素材のためのドローイング」は、作品の中で組み合わされた素材の一つ一つが、
それぞれ新しい表情をみせる場となっています。

 

 

 

 

 

 

 

平松 宇造 Uzo HIRAMATSU

私の絵画は、物質感を排除し、表面を完全にフラットに仕上げることで、
鑑賞者に絵画を物質としてではなく空間や景色との繋がりを感じてもらいたいと考えています。
そのため、鑑賞者が絵画の表面に目を留めることなく、より空気感や気配のように感じ取ってほしいのです。

また、花をモチーフに描くことが多いのですが、花そのものではなく、花がそこに咲くように絵を表現したいという思いがあります。
花が自然の中や街中で静かに咲いている…そんな存在の仕方を絵画で表現することが私の理想です。

私の絵画は単色であり、関係性や物語を提示することを避けることで、
鑑賞者に感じることを重視した芸術体験を提供したいと考えています。

 

 

 

 

 

増田 泰子 Yasuko MASUDA

古物を蒐集する癖がある。
歯車、圧力計、螺子、杼・・・
人の手垢の付いた、くたびれたモノたち。
それらと合体させてオブジェをつくる。
錆や虫食いも美しく自然な佇まいのする、飾り気のないものが出来れば最高だ。

その作品たちには、決まって2つのモチーフがある。
ひとつは、アルルカン。
長い間、会社員をしていた。
当時は、人より多く働くことが美学とされ華美な生活と徒労感の中、日々が過ぎていった。
パウダールームの鏡の前の私たちの顔は、まるでピエロそのものだった。
ずいぶん時が経た頃にふと、手慰みに作った最初の手彫りのひとがたが出来た。
まるで自画像のようだったことを覚えている。
相変わらず、ひとがたを今も作りながら私は何者なのか‥と問い続けている。

もうひとつは、舟。
ある時は、ぐんぐんと進み、時にはぐるぐると彷徨いつつ自身も世界も進んで行く。
流れに逆らいながら、委ねながらくりかえし生命の営みは続いて行くだろう。
渦の中に消えないように、
古物の力を貰いしなやかでゆりかごのような舟を作りたい。

 

 

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展覧会DM