堀越千秋 展 – とんぼのあぶく –

Chiaki Horikoshi Exhibition

2000年9月12日(火) - 9月30日(土)

■DMテキスト
2度と来ない、
   永遠の、夏の形見       
 
   山のキノコ…
       大きな二つの実…
  水中のヤゴ… 
      雨の気配…
     カゲロウと風…
         貝のふた…
   鮎の卵…
     夕涼み…
   木の根…
       雷雨。
※ 新潟県小国村芸術会館で展示された約30点の作品を出品。

■ 堀越千秋プロフィール
1948年東京都生まれ。
東京芸術大学大学院油画科専攻終了後、ヨーロッパ各地を放浪。 1976年スペイン政府給費留学生としてマドリッドに定住する。

マドリッドを中心に世界各地で活動を続ける堀越は、「スペインは、誰もがヒピカソの勢いと、短気と、粗放さ を持っている芸術国家だ」というスペインへの共感をベースに、絵画、立体、壁画などのアートからカンテ( フラメンコの唄)、エッセイといったさまざまな分野において、 ダイナミックで幅広い作品を生み出してきた。
「武満徹全集(小学館)」の装画で経済通産大臣賞。ライプチヒ市「世界で一番美しい本」日本代表に選出。全日空機内誌「翼の王国」表紙絵でも知られる。
カンテの名門一族「アグヘタファミリー」との親交を深め、カンテ(フラメンコの唄)の名手としても活躍し、2004年フジロックフェスティバルにも出演した。
著書に「フラメンコ狂日記」、「絵に描けないスペイン」「赤土色のスペイン」「美を見て死ね」など多数出版される。

2014年、スペイン政府より文民功労賞を受賞。
2016年、マドリッドにて死去。

■ レビュー
「ピカソとART」
 
さて、遠く西方から日本を見るとどう見えるか。スペイン人を当地の肉屋に例えるなら、日本人は蒔絵の職人である。下地から筆致の一毛に至るまで、「責任」がかかってくるその絵!
 
蒔絵は「工芸」といわれ、ピカソはARTといわれる。工芸とARTの違い、とは何か?工芸は世界的内存在であり、つまり「用の美」、「世界」の中にもともとしかるべき寝場所がある。
 
一方ARTは存在に問いを発する全体性(=人格)を持っており、「世界」の中には死場所しかない。むろん、両者の違いは感覚的なものであるが、日本人の好みとするところは、おおむね、「役に立つ」や「使える」であり、「趣味と実益」であり、あるいはお縄を打たれて神妙に白洲にうなだれている懐石料理みたいにチンとおつにすまして納まりよく「キマッて」いるもの、つまり工芸に傾いているのである。
 
昔から銀座のギャラリーを見歩いて楽しんだ記憶がないのは、蒔絵の重箱のスミばかり見せられるからだろう。歩き回って楽しいのはスペインのギャラリーで、各自が傍若無人にエネルギッシュで、人間がなにかを言っている感じがあるからだ。
 
死んだゴッホに大金を出すのに、生きているゴッホ達にはハナもひっかけない、(これは生命保険会社だからかもしれないな)こういう「文化国家」日本は、まだ重箱の中の鎖国なんだ、と本当に思う。
 
それじゃ、この「芸術国家」スペインはどうなのか、といえば、僕のアトリエの下の石ダタミの上を、ジプシーがラッパを吹いて小銭をせびったり、刑事が大きな拳銃かついで走り回ったり、ひったくり男と淑女がハンドバッグでつな引きしていたり、モジリアニの恋人だったという老女がカフェで足組んでいたり、ジプシーがベンツでフラメンコの宴の誘いに来たり、ベルリンで個展が始まったばかりの友人が赤ん坊のミルク代借りに来たり。
<堀越千秋>
                              
■ Opening
9月12(土)pm4:00~ 「堀越千秋を囲んで」